リフレクション写真展
タイトル:リフレクション写真展
出品作家:
Division1 金子泰久 森下大輔 横澤進一
Division2 村越としや 山下隆博
ディレクター: 湊 雅博
ギャラリートーク司会:
Division1 深川雅文(キュレーター)
会期:2014年5月13日(火)〜5月25日(日)
感想文: この事件は単純にしてかつ難解である
【写真】(1)
ようやく土日に多摩川を渡れる日々が戻りつつある。新宿へ。きょうは「リフレクション」展のギャラリートークに参加。長らく会えなかった人たちと出会えてよかった☆
【写真】(2)
書店に勤めていたときと違って工場勤めになると忙しい時は本当に時間がなくなる。工場と家の往復で一日が終わるか、工場だけで一週間が終わるか。
【写真】(3)
そんな生活を続けるうちに僕のなかで多くの芸術作品が死滅していった。最も壊滅的な被害を受けたのは文学(小説)で、これはもう時間がないのだから仕方がない、読めない。
【写真】(4)
そんななかで唯一というか、かろうじて生き残ったのが写真で、ごく稀にだけど、家に帰ってソファーに寝転んで写真集をただ眺めていた。
【写真】(5)
風景写真が好きで、本当ならじぶんで旅するのがよいのだけど、写真家の眼差しによって切り取られた風景というのは、それはそれで感じるものがあった。
【写真】(6)
スティーブン・ショアー「Uncommon Places」という写真集が好きで、ただボーッと眺めていた。写真が好きなのか、あの頃のアメリカが好きなのか、ともかく感じられるものがあって、ぼくにとって写真というメディアはまだ生きていると実感した。
【写真】(7)
Stephen Shore
【写真】(8)
写真集を眺めるのもよいけれど、写真の現在を感じるという意味では、やはり写真展に足を運ぶのが一番。特に湊雅博さんがキュレートする写真展は、作家のセレクトがよく、現在活動している写真家の作品と問題意識を深く感じ取ることができる。
【写真】(9)
きょう観たのは金子泰久、森下大輔、横澤進一、村越としや、山下隆博の5名の写真家の作品で、前から観ている写真家もいたし、初めて観る写真家もいた。
【写真】(10)
どのジャンルでも似たようなものかもしれないけれども、写真の場合、やりつくした感というのがあって、写真を作品として成立させることが非常に微妙な感じになってきている。
《参考テキスト》
【写真】(11)
過去の作品に回収されない写真、写真史の文脈に回収されない写真。他方で商業写真のように、ある目的に依存してしまう写真ではない写真。
【写真】(12)
きょう「リフレクション」展Division1のギャラリートークで作品を発表している写真家の話を聴いていても、そういった微妙な感じ、捻れた感じが伝わってきた。
【写真】(13)
森下大輔さんは、「写真至上主義、個人の視線を排除する写真を何年か撮ってきたけれど、どうも違うのでは何か? 自分が感じるもの、ある種の倫理観や願望が入ってもいいのではないか? そう思うとここ数年で写真が変わってきて、写真に動きが出てきた」と
【写真】(14)
【写真】(15)
横澤進一さんの写真は、荒川の水辺を撮ったもので、アノニマスというか、場所性が感じられない、漠然とした感じの写真 。
【写真】(16)
日本のどこの河川でも見られるような、草が生い茂った、ゴミが捨てられた汚い場所のようでもあるけれど、見方によっては庭園のように美しく見えてしまう。
【写真】(17)
接写しているから構図は取れていないのだけど、テクスチャや色のバランスが取れていて絵的に成立しているようでもある。
【写真】(18)
横澤さんの写真は物語性が希薄なので、当人に言われるまで、あまり意識しなかったのだけど、水辺の写真を撮るようになったきっかけは「震災」と同じ時期に体調を崩して入院していた「父の死」だったという。
【写真】(19)
きょう一番興味深く観たのは、金子泰久さんの写真。金子さんの作品は初めてで、これまでどんな写真を撮ってきたのか知らないけれど、非常にミニマルな写真であった。
【写真】(20)
プリントを大きく引き延ばした写真が3枚だけ。3枚とも同じ場所を撮っているのは分かるし、人もいないし、金属のパネルやフレームが映っているだけ。接写しているので平面的で、エッジが効いているというか非常に構成的な画面。
【写真】(21)
写真のアプローチとしてはミニマリズムの文脈に沿っていそうなのだけど、何か違う。どことなく気持ちが悪い。
【写真】(22)
3枚の写真が連続していて、実はループになっているという、シークエンスの効果を狙っていたり、物質性、場所との関係性、サイトスペシフィックではあるのだけど、いわゆるポストミニマルのアプローチとも違う。
【写真】(23)
それで金子さんの話を聴いてみると、「撮ったのは新宿の以前銀行だった場所、廃墟とまでは言わないけれど、都市のダークな一面、何かあった、事件現場を思わせる場所」とのこと。金子さんは豊田商事の殺人事件を思い浮かべていたらしい(汗)。
【写真】(24)
この飛躍に唖然としてしまったのだけど、都市の醜悪さを表現しようと思うなら、ダーティ・リアリズムとかに走ってしまいそうだけど、金子さんの場合、写真じたいは極めてミニマルなのであって、「どうしてこういう表現スタイルが生まれてきただろう?」って思うと面白かった。
【写真】(25)
金子泰久さんの作品を観ていて連想したのは、エドガー・アラン・ポーで、あの人も金子さんっぽいと言うか、都市の醜悪さを描いているけれども、作品は極めて構成的というか、ミニマルなアプローチをしている。
【写真】(26)
「諸君、断っておくが、これは過去の作品に回収されたのではなく、過去の作品を再発見したのだよ」。
【写真】(27・終)
「この事件は単純にしてかつ難解である」
(E.A.ポー「盗まれた手紙」)
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